現実へ/動坂昇
思うに、震災および津波、そして原発事故は少なくとも私たちをふたつの現実に直面させた。ひとつは剥き出しになった現実、すなわちあらゆる想像を超える自然の破壊力だ。もうひとつはいまだ剥き出しになっていない現実、すなわち見えない放射性物質の飛来だ。
あの剥き出しになった現実はいかなる表象も受けつけない。自然そのものの他には、いかなるものもそれを表象することができない。かたや、いまだ剥き出しになっていない現実は実におびただしい解釈を与えられている。誰も真実に到達できないということが、万人が真実性を争うという逆説を呼んでいる。
この状況において、すべては仮象である、もしくはすべては解釈であるという主張
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