最速ラッキーガール。/ねことら
服のことだけかんがえる。リピート。あした着る服のことだけかんがえる。そうすればモルヒネに浸ってしあわせになれる。かんたんなおまじない。そんなのがほしい。直訳すれば、すぐ外す看板のことだけど。だれもわるくない。なにもかもリアル。
まずは裏口からダッシュで逃げる。おかねはない。作戦もない。実家はだれもきてくれないだろうし。逃げ切るかおいつかれるか。それだけで十分。ハッピーなことに、わたしは中学のとき陸上部だった!400メートル専門。フロントのつかれたおとななんかに負けるつもりはない。
とりあえず濡れた髪をドライヤーで乾かし、ストレッチをはじめる。わたしは、この街で誰より早く駆ける筋肉を持ち、若く、きれいで、きっとなんの傷を負うこともない。
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