遅すぎた青年期の終わり/北村 守通
部屋を目の当たりにして
積み重ねてきたはずの20年ががらんどうでしかなかったということを思い出したが
振り出しに戻ることには慣れていたし
また
それが自分に残された唯ひとつのものである様に思われた
なくすと分かっているものならば
やはり
持つべきではなかったが
毎度後から思うことが
久しぶりに頭の中に顔を出したとき
思わず微笑まずにはいられなかった
強くなった風が
何を言っているのかさっぱりわからなかった
叩きつけ始めた雨が
何を言っているのかもさっぱりわからないようになっていた
私は窓を閉め
鍵を掛けたことをしっかりと確認すると
冷えきった惣菜と
温くなったスポーツ飲料で
がらんどうになった部屋の中で
最後の食事を済ませ
お別れとした
今度は本当のお別れの挨拶をした
いついつまでもお元気で
との言葉をつけることを忘れなかった
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