Swan/南 さやか
 
時間を失くした鳥たちは
夜明けの湖に集い 互いの夢を宥めあう
凍りついたみたいに鼓動を止めて
過去から届く笑い声に 耳を澄ます

そして声にならない 声を上げ
湖面の靄から一羽 また一羽と
羽音をたてずに舞い上がる

祈りは一体どこへ 届いたのだろう…
皆 その行方を探していた


大切な人を置き去りにしたまま
舞い降りたこの場所は
天国と呼ぶにはあまりに寂しすぎる

黄泉の鳥たちが寡黙なわけを
おしはかる朝の闇の中で

私は次第に 昨日までのことを 忘れて行く



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