車中和姦/雑魚ヒロシ
 
こんなにがらがらの夜の電車の座席で、車中にたったふたりのうちのひとりのあなたの傍に座ってしまった私ですが、でも別にあなたの事なぞ全く気にかけてなんていなかったのです。
ただ、それなりに規則正しい振動に包まれながらあまりにがらんと静かな車中と、その様子を無機質に照らし出す無機質な白色灯のあかりが、どこかのどこか寂しい部分にまとわりついていただけのことです。
あなたも、でも、私と同じような気持ちだったようで、暫く二人は無言のまま、そのうちあなたが寝息を立て始めたので、私は窓枠の中で揺れ続ける人間らしき二つの像を眺めながら、明日の予定を数えてみたり、現実が貧しくなるとユートピアが生き生きと働くなんてどこかで読んだ事を思い出してみたり(笑っちゃいますね)しながら、ポケットに手をつっこんだままボケッと窓の奥か手前を眺め続けていました。
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