コアントロー/Six
 
箱の中に、一つだけ余っていた
ショコラのような口づけを
今日、した

口に含むと
甘い味のゼリー状のリキュールが
でろん、と流れ出た

銀紙を固く丸めて
手の中に握り締め
背の高いわたしが
舌をもっとこじ入れるために
なぜか
爪先立ちのような格好になるのが
いつも、不思議だった

熱い唾液の中で
ショコラの茶色が溶けて
わたしたちの歯を汚す
あたたまったコアントローを
わたしたちは何度も交換しあい
でもそれは、いつしか消化され
薄れる

そのかわり酔っ払いになって
不安定な足元が
とても、あやうい
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