口笛/メチターチェリ
り夢の中で口笛を吹く私は膝を抱えて曲名
が思い出せない
お湯から突き出した膝小僧が赤い
喉が渇いている
先に行っていてください
言葉は後から追いつくので
そう言って送り出した人ひとりも戻らなかった
私は蛇口をひねって行進を見守りつづける
氷づいたあしおと静けさを帯びている
いつもどおり注意ぶかく洗うんだ歩くんだ
爪先を水弾がかすめて泡が破裂して
空に浮かんだ半月が昼間の蛍光灯に照らされ白く
蒸気のなか目を開けても前が見えない
息があがり
すでに満杯になった浴槽から温もりが次々とあふれ出し
誰もがあふれ冷たくなっても私は吹きつづけた
いまとなっては
私自身を繋ぎとめるつたないメロディライン
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