お爺さんはお爺さん/灰泥軽茶
お爺さんが訪ねてきた
孫に会いに私を訪ねてきた
しかしお爺ちゃんっ子だった
私の祖父はもうだいぶ前に死んでいる
今自分がどこに住んでいるかも伝えないなんて
随分ひどい話だなぁと
当惑するお爺さんを見ながら
死んだ祖父を思い出し
急に哀しい気持ちになった
ここのはずという顔をしながら
去って行ったお爺さんの
廊下を歩き
階段を降りていく
足音の響く音に
しばらく耳を傾け
晩年足が悪くなった祖父は
足をすって歩いていたので
玄関近くのコンクリートや畳をこする
足音の響きを思い出し
また元気だった頃は商店を営んでいたので
よく自販機からじゃりじゃり百円玉を袋に入れながら
お小遣いをくれたことを思い出し
耳の奥でいろいろな音が響きはじめ
懐かしい匂いがすうっと通り抜け
はっと
あのお爺さんは
どこかで私のお爺さんだったのかなと
宙をじっと見据えた
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