お爺さんはお爺さん/灰泥軽茶
 
お爺さんが訪ねてきた

孫に会いに私を訪ねてきた
しかしお爺ちゃんっ子だった
私の祖父はもうだいぶ前に死んでいる

今自分がどこに住んでいるかも伝えないなんて
随分ひどい話だなぁと
当惑するお爺さんを見ながら
死んだ祖父を思い出し
急に哀しい気持ちになった

ここのはずという顔をしながら
去って行ったお爺さんの
廊下を歩き
階段を降りていく
足音の響く音に
しばらく耳を傾け

晩年足が悪くなった祖父は
足をすって歩いていたので
玄関近くのコンクリートや畳をこする
足音の響きを思い出し

また元気だった頃は商店を営んでいたので
よく自販機からじゃりじゃり百円玉を袋に入れながら
お小遣いをくれたことを思い出し

耳の奥でいろいろな音が響きはじめ
懐かしい匂いがすうっと通り抜け

はっと
あのお爺さんは
どこかで私のお爺さんだったのかなと
宙をじっと見据えた










戻る   Point(8)