ニンジンガスキー/灰泥軽茶
 
とりとめもない映像を眺めながら

皮を剥き縦に切った細長い人参を
齧る
何もつけずに齧る
美味しいかと尋ねられれば
ちょっと柿みたいで美味しいかなと言う

実際は齧る行為に動物的な快感が
前歯を通して大きな脳を
貫いているのだが
そんなこと考えて齧っている訳ではないし

最近齧りたくて齧りたくて
そこらへんに落ちている枝とか
もれなく齧れたとしたら
ずうっと齧りっぱなしだなとか

綺麗に満ち欠ける
夜の月も少し齧れるとしたら
月の王様に来る日も来る日も
月を齧ることを命じられた
兎の夫婦のように
きっと素晴らしく
心が落ち着くだろうかなと
ふと思う




戻る   Point(13)