失踪者/プラント/無蓋貨車/高濱
 
暗幕の夜の影が波打ち、その襞に隠される。

精神分裂的傾向を呈す病人の寝台には誰も近寄らず、烙印を捺された羊が喉を割かれると血を流す眸から月が落ちてゆく。



予め実存を剥奪された白痴として、腕を伸ばすと乾燥花入りのボウルに歪んだ鏡像が微笑み、釣り上がった口角が喋り出す。

天然の眼球が水平線の上に視線を合わせると、そこには自動車に乗った男の上半身が窓より外へ乗り出しているのが見えるだろう。

両腕を差し出す夜盲症の婦人が導きに従い辿り着いたのは精神病院の廊下だった。



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