おかえりなさい。わたしは彼の内腿へキックを放つ/鈴木妙
 
 いまここの地下にはたくさんの首が埋まっているのだ、と語る朝倉氏の口の端についたケチャップをぼんやり見るうちに、なんだかあられもない想像をしてしまって、それはそれを血液にたとえて怖く、抱かれたい、といったものではまったくなかったな、という反省まで来て宮下さんはマグカップを置いた。これからバイトである。仲よく食事とは浮気ではないのかな。浮気ではないだろう。そのようなことはぼく側にもちょくちょくある。現にぼくは宮下さんとつきあっていながら他の女性と幾度もステーキを食べた。ステーキはおいしかった。じきに好きですと言われたが固辞した。浮つきなどしない。どこにでもあることだった。
 どうあれこの町は治安が
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