命の呟き/HAL
 
ある日からぼくは命が呟くのを
耳ではなく心で直接聴ける様になった

命は言う ぼくが挫けるときに
誰だっても転けも挫けもするが
まだまだ俺もお前も大丈夫だからなと

命は言う ぼくが愚かな行為をするときに
好いかよく憶えておけよ
俺の許しも受けずに勝手に俺を殺すなと

命は言う ぼくが調子に乗っているときに
偉そうにしやがって俺がいるから
お前は生きてることを忘れるなと

命は言う ぼくが電車で席に坐っているときに
俺には見えるがお前に見えないか
お前のすぐ側に立っているお年寄りがいるのを

命は言う ぼくが戦うことに決めたときに
間違っても俺を惜しむなよ
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