太宰の孫/マチムラ
だって足にマメをつくったことが無いのだから
不戦勝っていう言葉は嘘なんだね
殊に人生においては
最近それがやっとわかってきた
自分はただ差し迫った問題を
見送っていただけなのだ
検討課題というもっともらしい
お着せ列車に乗せて
いつも重要な分岐点は
過去にあるものとばかり思い込んで
いま自分の手に握られている
スウィッチングレバーを軽視して
この告白めいた心中の徒労を
今ここでどの様に着地させるか
考えているということに
未だ奇怪な心の錬金術師を
辞めきれていない理由があって
だからこそ詩が書けるわけだが
自分から着た拘束衣を鏡に映して
喜んでいるうちには
外にも出られないことも知っていて
そんな仮称:能動的他殺の言い訳に
自称:太宰の孫を気取ってみるのだ
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