ビリー・ザ・キッドに贈る/まーつん
顔も知らず 会ったこともないお前に
懐かしさを 感じずにはいられない
なぜならお前は 子供だから
誰の胸の内にも 棲んでいる子供
我を通し 地団太を踏み
欲しいものをつかむまで 手を伸ばすのをやめない
そう 結局のところ
ガキだったのさ お前は
だけど ビリー
俺にとって お前は
みじめさとは無縁で すがすがしくさえあり
開拓の神話の中に生き続ける セピア色のイコン
己の自由と他人の命とを 秤にかけようとする
決してやむことのない 本能からの呼びかけ
そして
誰かとぶつかり合ったとき 闇の奥から手招きする影
暴力という安易な選択肢への 執拗な誘惑
ビリー
お前はあの世でも
好きにやっているんだろうな
お前の実像を 知る者はいない
同じ時代に 生きた奴等にとってさえ
お前という人間は 量り難い存在だった
ビリー
お前は今も何処かで
支払い続けているのか?
自由への代償を
戻る 編 削 Point(6)