蜻蛉記/高濱
 


小鳥の羽根を毟るのは、愛がわたしを手招いて、これほらごらん、籠の鳥、羽根をなくした籠の鳥。

流されてゆけ、地獄まで、数えて十三夜の弔い、菩薩の鳥がやってきて、慈悲賜れとおっしゃれど。

あたしにゃ羽根はござんせん、鈴降る夜行もありゃしない、紅殻鳥の羽根毟れ、紅殻鳥の羽根毟れ。

金切鋏振りかざし、後を追うとも火の海で、家もそれきり焼け落ちた、残ったあたしゃ地獄行き。



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