時の散歩/木原東子
思い出の箱を
春の野に
夏の朝に
秋の鳥に
冬の霰に隠してる
栗鼠のように
大切な食料
びっくり箱のように
色彩が溢れないように
暗証番号つける
秘密のファイルのように
コールドケース
未解決事件の資料のように
涙はあれとあれ
笑いや自慢はこれひとつ
怒りと憎しみはあそこ
不愉快だから押しやって
悔しさと失望は
これは隠しきれない
身にまとわりついて
幸運は努力は
不運や皮肉や裏切りは
失敗は
罪は
罰は
恋した瞬間は
世界の美は
すべてありますとも
時の旅路の道程に
ひらひらと不可知の風
右に左に、高く低く
子どもだけは自由に遊ばせている
震える指はもがきつつ
で、肝心の自分が
いつも監獄に入れられている
自由が無い
自分に何が出来たのか
わからない
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