春/つむ
 
裏は浮かれ立って
刺さったとげを忘れているよ
春だね、
あちらこちらで
いっさいがっさいの傷跡が開いて
笑って祝福しているよ
たのしく喝采しているよ
春だね、
無色透明の春だね
だらけきった口元から
こぼれるよだれのような流血の
うっとりと麻痺した春だね
癒えないかわりに痛みもない
何んにも苦しくないままに
輪郭もとろけだす春だね
分裂のとまらない春だね
幾千幾万幾億に
増えて殖えてふえつづける春だね
全てが僕らになって
僕らが全てになって
僕らどこにもいない春だね
おかしくって嬉しくって
かぐわしく狂おしい春だね
垂れ流しのような春だね
ホメオスタ
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