春/つむ
春だね
言の葉も芽吹く 春だね
口元の
笑うたびに開く傷跡を
春だねって
嬉しそうに
血のあとをこすりながら。
重たいシャツを脱ぎ捨てて
ぬるい水の中へ
ふと思い出したように
墜落しながら。
あっけらかんと
春だねって
指先で小さく
ひねりつぶしながら
春だね
無造作にふみつけながら
春だね
ペン軸もなみだを吸う春だね
嬉しくって
うたいながら呪詛を書いている
春だね、
もうお定まりの春だね
無病息災の春だね
予定調和の春だね
美しくって あたたかくって
何もかも空っぽの 春だね
傷口はうるみきって
そこにあったことを忘れているよ
足の裏は
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