セレナイト・ローゼス/こん
 
ろどころむきだしの
赤い岩にはりつくように生えているだけ
隣まで3マイル そんな場所に
打ち捨てられた小さな家を見つけた

昼は圧倒的に熱い大気が哀しみをふさいだ
夜は地平線まできらめく星たちと歌をうたった

ひとりでも ひとりだから
さみしさが埋められていった
日々の些末な仕事が喜びを増やしてゆくのだった
時折この小さな砂漠を訪れる旅人に宿を与えたり
気がむけば抱かれることもあった 
「砂漠の薔薇よ」と
抱きながら旅人がつぶやいた

時は過ぎ
かつて薔薇のようだったローズの頬は
砂漠の風と年月が
ひび割れた石のようにした
でもなにもこわくはなかった


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