雨に濡れた文庫本/
灰泥軽茶
百円で買った文庫本
アメリカのとある古い短編小説
マウンテンパーカーの前ポケに
ちょうどだからと出かけるときに文庫本
雨がぱらぱら
結局ざぁざぁ
一日降って傘をさしていたけれど
春の気まぐれの雨で
文庫本はふにゃふにゃ
でも春の訪れ文庫本の匂いがかぐわしい
一日たって誰かに貸すのははばかるけれど
電車に揺られて合間
しとしと馴染む指先が
短い物語をすっと吸いこむように浸って
揺れてどこかの駅につく
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