春のリート/あまね
新しい暦が生成している
遠い国で洗い上がったシャツの匂い
ためらいと高揚
背中に触れる唇の温度
インディゴに溶け込むマゼンタ
梢たちを過ぎて
吹き下ろす視点から
成長を止められないぼくたちを
慈しむ存在がある
進むことしかできないぼくたちを
愛しむ存在がある
作りたての羽毛
蒸気の分子は影と光を曳いて
あおく、あおく群生する祈りを
あかく、あかく包含する恵みを
繰り返すよろこびと
見送るかなしみ
引き連れてあるく
くらがりには星
遠く放たれて
輝きを弱める貴石たち
真空へとなずんでゆく
折々のポケットにあわく灯る響き
花々をゆする風に
宿された命を燃やす
離れ離れの1000の歌を
この胸にあつめる
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