わがままな侵食/千月 話子
 
月 太陽 侵食 やがて三日月
  雲が形を変えて流れるスピード いつもより速く
  そんな日は風が冷たい もうすぐ冬に浸る体温
  温もりが恋しい と 手足が騒ぎ出しそうだ



夜11時に爪を切るおまえの指に 半月が親指だけ出てた
熱中する仕草に指先は 熱を灯してピンクに浸る
そっと後ろから近づいて おまえの背中を侵食しても
睫毛はピクリとも 揺れることもない


  最後に残った左の小指の小さな爪を切らせてくれよ


弾き飛ばされた欠片みたいに ほっとかれるなんて傷つくぜ


  最後に残った左の小指の小さな爪を共有しようぜ


月明かりに照らされた
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