続行/和田カマリ
昨夜の雨が
嘘のように
駅に続く舗道は
朝の光を浴び
キラキラしている
寝過ごして
少し遅刻気味
急ぎ足の僕
10分程歩くと
カーブの先に
いつものように
駅が見えてきた
その時ふと
地下の排水溝から
ゴーと鳴る
濁流音に混ざって
「タスケテ」と
聞こえた気がした
錆びた格子状の
四角い鉄蓋を
覗き込んで見ると
「何か」と
目が合い
「何か」が
消えた気がした
「女が流された?」
一瞬の出来事
だけど
僕が流せば
無い事
そのまま歩き続けた
電車が動き出す
車輪が拾う線路の音
ゴーと鳴り始めた
あの時の眼が
僕を捕らえて
離さない
「あれは何だったのか。」
トンネルに入ると
つり革に
座席に
窓に
今にも現れそうだ
胸に手を当て
「タスケテ」と
つぶやいていた
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