桜の蕾が噴く噴くよ/灰泥軽茶
ぽっかりとあいた満月
掌をむけて撫でるように
まわしていくと
桜のつぼみが
勢いよく
ぽんぽん弾けて
噴く噴くよ
夜空にたくさん
打ち上げられた
桜の花びらは
凱旋を祝うパレードのように
私を包みこみ心を満たす
掌を抱え込むように掬うと
しかしそれは灰のように
脆く崩れ消えてしまう
それならもう一度
ぽっかりとあいた満月に
掌をむけて撫でるように
まわしていくと
あたり一面満開の桜
その下には大きなブルーシートが敷かれ
私よりも随分歳をとってしまった
古い友達がわいわい騒いでいる
よく見ると
幼なじみと部活動の親友
気心知れた学生時代の友達
共に夢見た音楽仲間など
当人たち同士は知らない筈なのだけれど
美味しそうにお酒を酌み交わしている
その中に今をもう
音信不通になってしまったというか
それが本意ではなかったけれど
仲違いしてしまった友人が
おいおいこっちへおいでよと
呼ぶので軽く手を挙げ
そちらへ向かった
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