親愛なる声/HAL
でも30年は人間で言うなら何歳になるんだろうか
確かにリモコンなどは付いていなかったけれど
ぼくはきみを動かすために立ち上がっていくことは
何の面倒でもなかったし丁寧に創られた重量感のある
スイッチに触れることはひとつの喜びでもあった
きみは機械ではなく佳い声を出す親愛なる友だった
いまのぼくにはきみの様な友と呼んで良いものに
買い替えることはできないのはどうか分かって欲しい
いま親愛なる友と呼べるものはぼくには手が届かない
本当に残念な別れになってしまったけれど
ぼくはきみの声をいつまでも忘れない
ディジタルな機械に買い替え冷たい声を聴いてもね
いまも電源を入れると
きみはまだ生きているかのように
パイロット・ランプだけは点く
だからきみを廃棄処分にすることは絶対にしない
ずっと置いておくだけどぼくはきみを見ながら死にたい
心からお疲れ様とありがとう さよならはもちろんなしだ
For Dear My Friend LUXMAN L-505V, You Were On My Side Anytime.
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