「 振り向くな 」/椎名
 
冷たい風が吹くたび

何かに追われているみたいで

後ろを振り向いてしまう

ただあるのは自分の足跡だけなのに



正面から吹き付ける風は

前に進むことを拒もうとするかのように強く

冷たい

負けないように歯を食いしばり

おなかに力を入れて足を出す

俯いてなんかやらない

負けを認めたくないから



たとえ吹き戻されても

また一歩進めばいいんだ

後ろに下がるよりはまし

それが維持にしかならなくても

後退よりはましなはず



もしも何かが追いかけてくるとしたなら

それはおそらく過去の自分

遣り残したことを後悔する自分

過去にしばりつけようとする何か



全てを振り切って前を見よう

だってほら

手招きしてる

やっとここまできた

少しだけ見えてきた

ささやかだけど

探し続けた夢が

虹の彼方はもう目の前にあると




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