九十九里浜/ベンジャミン
今まで積み上げてきたすべて
足したり引いたりの繰り返しの中で
今になって足りないことに気づく
知らぬ間に見うしなってしまった
何か大切なものを
打ち寄せてくる波がさらってゆく
ゴミだらけの砂浜で
あおむけになっている貝殻を
遠くまで飛ばそうとした
太陽と重なった貝殻は
虚しく空にとける
ちょうどそんなふうに
始めから何も無かったかのように
さっきつくった砂の城は
もう白い波の中
見えないところで
失われてゆくいろいろ
その残像を追いかけるように
なくしたものの面影を捜す
けれど
なくしたものが
もう返ってくることがないように
どんなに歩き続けても
百にならない
九十九里浜
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