うたひめ/とろり
日ごとに沈む陽をすい込むので
黄色になるのかしら
彼と彼女たちのやさしいくちづけの為に
そよと風は吹く
ふれあうように抱きしめ
愛をささやいて
微笑むの
いちめんの菜の花
春は何処までも絨毯を敷いている
そのうえをうさぎや
いぬが駆ける
風に乗り薄いピンクのベールが
歌い手の羽に掛かり
ちりりり
驚いて
ちろろりちりりち
囀りが
五線譜になる
ちりりちろろりちろりりちち
空をおどりながら
蝶は芳しく羽ばたき
牛乳色の軌跡で
歓びを重ねて
ちりりり
小鳥は鈴の声であまい午後を奏でるの
そのなかでふたりは燃えるように
いつまでも春を言祝ぐ
ちりりり
うつくしい
あなただけが好きよ
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