路上で飲むカフェオレ/Utatane/Nayuta
ど彼女が何気なく僕に渡してくれた言葉が
僕の背負った不安を僅かながら降ろしてくれた。
僕は精一杯歌った。
歌詞を間違え、声がかすれた。
努力しているとは決して言えないけど
僕は数少ない必死になれる瞬間を愛していた。
笑い声は聞こえたど歓声は聞こえなかった。
白い目は見えたけど輝く目は見えなかった。
結局、誰一人として足を止めてくれなかった。
刃物よりも鋭利な実力不足が僕に痛みを走らせた。
だけどなぜか嬉しかった。
路上ライブを終えてから自販機でカフェオレを買った。
あたりにあった薄汚れた段差に腰を掛けて
おもむろにプルトップを引いて僕はカフェオレを一口啜った。
苦かった。
手に握った缶をよく見てみると
"UCC BLACK 無糖"と書いてあった。
路上で飲むカフェオレはちょっぴり苦い。
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