星になる君とさいごの夜にいる舌の氷の溶けおわるまで/木屋 亞万
職業を問われたら
いずれ星になることだ
と答えるような気障な男だった
宇宙飛行士といえば聞こえはいいが
今の時代そんな奴はごまんといる
宇宙産業が国営だった頃ならまだしも
小さな町工場からでも宇宙へ飛び出せる時代だ
高いところに行きたがる奴にはロクなのがいない
速さ 高さ 遠さ そんなことにばかりこだわっている
道路が削れるほど車輪で駆け回り
青空が曇るほどに飛行を繰り返し
宇宙に行ってなお塵芥を撒き散らす
どこに行っても迷惑な男
自分が楽しければそれでいい
自分がかっこよければそれでいい
自分が正しいと思えればそれでいい
君がそう思っているなら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)