お風呂の電球/灰泥軽茶
 
お風呂の電球が切れたので
薄暗い中お風呂に入る
いつもより念入りに
身体を洗い
身体を流す

匂いが鮮明だ
シャボンの匂いをくんくんする
お湯に浸かりまるまると

どこか遠くの知らない家の押入れに入ったような
知っているようで
全然知らない人たちに囲まれながら
生活している
そんなことでもないのに
柔らかい不安が
ニュウと
口から出てきて
薄暗い湯船の上をプカプカ浮いているから

栓を抜いて
チュウチュウルリと
排水溝へ流してしまおう

徐々に空気に触れていく身体は重く
色んなものが詰まっていることを思い知らされながら
お湯がなくなる前に
よいこらせっと
たちあがり
冷たい空気と明るい電気の下
身体ぶるぶる拭いていく


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