散文/田園
 
散文



ゆうらりと逢魔が時に立ち上がる
女は錯乱気味に
「ジユウ、ジユウ」
と叫んでいる
そのくせ尻をどっかり座らせ
介護されるのを待っている




君、そこの本を取ってくれないか
その緑色のハードカバーの
絵本だよ
動物たちが倒れた木を分け合って
幸せになるただそれだけの本さ
教授になって物理を教えているが、
僕のふるさとはこの絵本だ




かあさまのお化粧台、
そっと開いて紅を取る
鏡を見ながら下唇に塗ってみたら
不思議!
私が私じゃないみたい
かあさまはいつもこの台の前で
鼻歌歌いながらお化粧をしていた
とうさまの為かしら
でもあたし、ほかの誰かの為でもいいと今日思ったわ

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