春について(ホットケーキ)/木屋 亞万
 
寒さがやわらいできた
薄着でそとにでかけたからか 何かあたたかいものがたべたい

季節はくりかえさない
春とわたしたちがよんでいるもの
一度としておなじ春はこなかった

世界にはいままでだれひとりとして 同じにんげんはうまれてきていない
一度きりの春だから どうにもこうにも一回きり

五分前にせかいがつくられたとしても過去は単なる情報だから
たしかな情報さえあれば何億年も300秒もおなじ重みに思えてしまう

温かさとつめたさの中で逡巡している
送り出しては歓迎している 社会という小さな世界

しばらく寒い時期が続いていたので
温かくなったのがうれしくて薄手のコート
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