家路に立つ影/まーつん
 
だろう

鼻息の荒い抱擁に身を任せて
骨までしゃぶられても 微笑んでいられるというのなら
そう 君はその人間を愛していると そう言えるだろう

割に合わない役回りなのさ
愛という名の一人芝居は

いつか僕は
様々な出会いを経て だれかの前にたどり着く
そのひとは 僕を否定しない 全ての側面を
時の流れに削られながら 河口へと運ばれてきた
僕という 石ころの肌 その一つ一つの面の連なり すべてに
優しく口付けをしてくれるだれか ああ

僕を海のように 深く受け入れてくれる 

だれか

ああ ほんとに
愛とはなんだろう
僕はさびしかった
だが この瞳が探し求める 家路の先に立つのは

君ではない

僕が わが身を引きずるように歩ませる 本当の家路
そこに立って 迎え入れてくれる人影は

君ではない

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