空のみなしご/まーつん
空が涙をせがむから みんな互いに殺し合った
立ち昇る黒煙と 未亡人の嘆き
立ち尽くす 一人の少年
泥に覆われた 丸い頬
額にかぶさる 前髪の茂み
その奥にきらめく ひび割れた瞳
干上がった涙の跡は まるで 夏の日の枯れ井戸
煙を上げる街路 ばら撒かれた死体
影を伝い歩く死神たちは 大漁を前にほくそ笑む
少年は きっかけを知らない
砂漠の街ではじけた 血と宗教の軋轢
信ずる神をたがえる 多数派と少数派
その見えない亀裂が 同朋の集まりだったはずの この国の人々を引き裂いた
普段はにこやかだった大人たちが
みな眉間に皺を寄せ 酒場で議論していたのは覚えて
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