花蒔き/田代深子
 



祭りのごとく花を蒔き
塩を蒔き
くうとなき空飛ぶ鳥に
豆を蒔き米を蒔き
菓子を蒔き食うや食わずの
子らには餅を蒔き
子らは走りきて掴みあい
奪いあい
わらうか
視子は
空掻く声で
毛羽だった錦ひき
傘鉾かかげたやまぐるま
のなかで
わらいさわぐ路の子らは
くるまをかこみ
手にてに
餅を握り土まじる米と豆を
あつめ化粧紙を裂いて菓子を
ほおばり
花は
くるまの小窓に投げ入れて

視子はいま足もなえ
瞼はれ耳ただれおち
乾きささむける
くるまの揺れも骨を打つ
いっこの痩せた根塊のごと
冥がりで
綿の床にうずもれ
みている
真白の
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