苔地蔵/灰泥軽茶
 
山を歩いていると
深い緑に浸り
濃密な孤独感と解放感を
吸い込み吐き出す

誰もいない山道に
誰かの視線があるかと思うと
綺麗な赤いまえかけをした
苔だらけのお地蔵さんが
ところどころで迎えてくれる

私は全てに立ち止まり
手を合わせることはできないので

心の中で
「こんにちわ」
とあいさつをして通り過ぎているのだが

ときおり
ちゃぽんと
石ころ大のお地蔵さんが
心の中に飛び込んで
あぶくを
しゅわしゅわしゅわわわ
とたくさん吐き出し消えていく

私は普段計り知れない自身の奥底広さを
全身鳥肌で疾走し
ぶるぶるっと武者震いし
少し足早にその地を通り過ぎる




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