数学俳句/小池房枝
 
コスモスがささやくコスコスサインサイン
トーラスなドーナツ揚げる霾る日

筍で円、放物線、双曲線
曲水の宴メビウスの帯締めて

死者互入生者の輪の中盆踊り
吊るし雛アルキメデスの立体で

四月ばか最大の素数発見す
二茎の薇が描くクロソイド

貝も銀河も対数らせん涅槃西風
大数の法則知るや龍淵に

ひと休みゼノンの亀がきゅぅと鳴く
体重計瞬間速度春うらら

畳み込み角力の四十八手かな
天高くクレーン四基ハノイの塔

ぼたん雪コッホ雪片睦びあい
春深しラマヌジャン忌は4.26

仲良しの蛇が三匹ボロミア環
三は嫌い山帰来いつも自己嫌悪

毛の生えたボールの定理春一番
カテナリー曲線木陰のハンモック

ホワイトデー πの日ならばパイを焼く
セールスマン巡回問題 梅雨夕焼

分数や少数無理数神の留守
クラインの蛇四次元で皮を脱ぐ

砂浜を素足の素数がかけてゆく
緑陰や七分の一のリフレイン

クラインの花籠に摘む寒すみれ
しゃぼん玉ひととき世界を写像する
戻る   Point(5)