ゆめ、虚無に来たりて/青土よし
 
苦しまずには
生きられぬので
彼を愛さずには
生きられぬのです。
狂つた世の中で
肯定出来ぬ
現実の中で
寒すぎる
冬の中で
呻吟し乍ら
立ち尽くしてゐる
彼の
夜を
そつと
遠くから
見詰める。

こんな
深い夜の中
では
何一つ真実
では無くて
或いは
すべてが
真実でしか無く
嘘すらも
真実と
なつて

考へる暇も無く
感じる暇も無く
あいしてゐるんだ。
あいしてゐるんだ。
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