240311/ねことら
pray for.
ある、祈りがあった。そこ、ここに立つ、柱があった。薙ぎ払い、覆い尽くす水があった。黒い水があった。語るべき言葉はなかった。奪われたまま立ち尽くす、今、今の物語だけが、ここにある。
たとえば、言葉、それ自身が背骨をもち、自発的に他者を支えるだろうという幻想は、圧倒的暴力の前で、跡形もなく押しつぶされる。言葉が、あなたを、わたしを、ただしく抱きとめることができるのは、あなたが、わたしが、言葉とただしく向き合う準備ができたときに限られている。その冷然とした事実に、つながることさえできていなかった。いま、こうしてたよりなく言葉をあつめ、息を吹き、もや
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)