友よ/いねむり猫
 
この秋のあまりの美しさに 歩みを止めてしまった友よ

色づいたけやきの葉を透かして やさしい光が
おまえの大きなからだをつつみ
少し眉を寄せて 落ち葉に埋まった足先を見つめながら
一人思いを練っているのか

立ち止まってしまったおまえは 
もはや 歩き出すことはできない のに

 五十歳を超えてから、おまえは熱心なマラソンランナーになった
 人よりも高い視線で 快適な速度で お堀を走っていた

 野球部の高校生たちを追い抜いたって
 得意そうに話してた 

 皮肉なF・K・ディックに波長を合わせて
 この世界のうかつな構造を見抜いても
 知らない振りで通り過ぎる
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