遠ざかる 音/いねむり猫
嵐は 過ぎ去ったようだ
水しぶきを上げて 遠ざかる 深夜トラック
小さな町の バイパス沿いの店で
だれも来ない夜を 過ごしている
数台分の駐車場は 埋まったこともない
看板は古びて 夜の営業など 注意深い運転手にしか 分からない
小さなランプが一つ 傾いた店の名を照らしている
大きなトラックの群れが 再び通り過ぎて行く
この街とはかかわりもない 多くの出来事が この店を通り過ぎる
この場所で過ごすこと
人々が 見知らぬ無数の街に住み
悩み 笑い 悲しみ 怒っていることの その確信を失うこと
世界から 深く 切り離される こと
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