祈り/瀬崎 虎彦
 
るが、それもまもなく終わる。雨が降っている。

 死の場面を目撃したことが、わたしにその苦しみへの共感をもたらしたわけではない。しかし、目撃されずに完遂される死は、たとえばテロリストの首領に対する報復のように、知らずにいたとしても同じ重さで起こる出来事だったのである。それらを目にすることのない場所にいればわたしは安全であったかもしれないが、それでは事態の解決には至らない。生き物は死ぬ。必ず死ぬ。それでも、ある死に対してわたしが過剰に反応し、また別の死に対してそうではないということを、どう説明するのがいいか。わたしはベジタリアンになって、今日からの日を鎮魂に費やせばよいのか。

 死がわたし
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