穴から/くさいきれ
 
悲しんでいると

ふっと、穴に落ちているのに気がつく。
穴の中の壁は砂でできていて、それがさらさらと落ちてくる。
どこへ行ってもおんなじ風景。
辺りを見まわして、
つついて、
よじ上ろうとしてみたり、
またまた、穴を掘ってみたり、
砂はさらさら埋めていく。
寝ころがって、ポッカリ浮かんだ月を見ていると、
いつの間にやら地上にいる。
僕は喜々として生活している。

穴の中で見たものとここ地上との間に何かがあった。
たしかに何かがあった。

そして、ある日、悲しんでいる。
また、穴の中。今度は、ひんやりした洞窟のよう。
行ったり来たり繰り返す。

母ちゃんの穴から落とされ、早ン十年。
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