深夜の汽船/灰泥軽茶
 
牛乳パックで作られた船を
大事そうに
肩のあたりまで
右手でそうっとあげ
左手で船を支えながら
夜の闇を
街路灯や玄関ライトをよけ
蛇行しながらコンビニへと入っていく

クレヨンで牛乳パックに
色をつけているので
ロートルの錆び付いた汽船のようで
なかなか恰好が良い

汽船はゆっくりと
溢れる光の波を
音もなく一周し
何事もなかったかのように
また闇の中に消えていく

残された人たちの
心の弁はパカリと開き
汽笛をボウボーと
吐き出し見送りをする







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