ナイト・アンド・デイ/瀬崎 虎彦
 


   片手で奏でるエチュードに耳を貸せ

夜は長く眠りのトンネルはまだ遠い
よく見知っているはずの顔 聴き慣れたはずの声
電波の向こう側 雨の狭間で 濡れそぼる素粒子
解決のない問いにとらわれ
夜も昼も絶えずおなじ面影に焦がれる
言い訳は星と同じに遠い光を降らせるが
顔を上げることがなければ認められない

   両手で奏でるソナチネに耳を貸せ

輪郭を撫で上げて朝が訪れる
これから目を覚ます人々にかわって
重い眠りに落ちる男女がいる
鉛のように身動き一つせず
交わした愛の代償を時間で支払う

雨はあがった
電波の向こう 受信機の向こう
世界はかならず広がりを持って
朝も夜も そこにあるようだ
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