早朝の挨拶/いねむり猫
世界の中心が まだ 定まらない
早朝の あいまいな時
コーヒーの香りの中で過ごす
周囲のテーブルは まだ
みんな 自分の殻から 抜け出す途中
無防備な現れが 互いを ゆるし合っている
ぼんやりメールを見つめながら 温かい器を口に運ぶ
育った肥沃な土 麻布の上で浴びた天日 鋳鉄の回転するかまど
苦味がゆっくりのどを下り 鼻の奥でひらめく酸味
舌をころがる甘さ 成熟した青の香
目覚めはじめた感覚を通して 体に 南国からの挨拶が送られる
部屋を出て この店にたどり着くまでの
ほんのわずかな時間で
すでに緊張してしまった 武装をゆるめて
時間を少し 後戻りさせて
布団の中の甘さを 思い出そうとする
からだとこころが はなればなれになる
そのまえ
ととのった感じを つかまえている
このひとときに
大切な人へ
朝の挨拶を 送ろう
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