語る死す/kaz.
2011/11/14 23:47
夜道、ひっそりと息吹く新芽のことを思いやる。手のしわから生え出た薄緑の突起が、寒さで枯れてしまわないよう温もってやる。ポケットに突っ込んだ手の握りは優しい。握った手の隙間から漂う新芽の甘い香り……殴られたときの痛みを知らない人たちのように、という例えを使う。そうすれば世界が血の気に満ちているのが分かるだろう。ただ一つ、安息があるとすれば、握り締めた拳の中の汗くささだけだ。
(……沈黙。「香りは、闇のなかで最も多くのことを語りたがる。どうやって語るのかを、最も知らずに。」という一節を挿入する。その隣に、月の出る晩の澄み切った空気ほどに張り詰めた気迫を描こうと
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