「ひびく、音」/ベンジャミン
誰もが知ってることなのだろうか
あ行が持ってる すべてを包み込むような優しさを
か行が持ってる 力強い歯切れのよさを
さ行が持ってる すがすがしい風のような静けさを
誰もが知ってることなのだろうか
た行が持ってる はずみながら駈け抜けるような心地を
な行が持ってる もどかしくのどの奥でとどまる一瞬の間を
は行が持ってる かたくなになっていた心をほどくような息を
誰もが知ってることなのだろうか
ま行が持ってる 待ちわびた頃をむかえるような時間の囁きを
や行が持ってる ふれてみたくなるほどのやわらかな流れを
ら行が持ってる りんりんと響く鈴の音のようなリズムを
わ行が持ってる 終わりを次の始まりにつなげるような確かな鼓動を
誰もが感じていることなのだろうか
五十の音が奏でるものが
ひとつひとつ違うものを持っていて
そうやって、ことばが生まれていることを
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