春の道/寅午
 
春の道は
あたたかな日ざしに雪がとけだし
土といっしょにベチャベチャやる

冬のきびしい戒めから解放されたよろこびを
全身であらわして
道ゆくお嬢さんの足にすがりつく

子どもたちがドヤドヤやってきて
長靴をはいた足で
泥にいのちをふきこむ

車がとおると
百万回ふみつけられ
百万回混ぜ合わされた泥をはねあげる
いかついおじさんのズボンの裾にも
しかめっ面のおばさんの靴にも
おかまいなしにひっかける

これが春だという風に
春の道は
さらに雪がとけだし
土といっしょに
いっそう激しくベチャベチャやる
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